オーディオ信号の扱いはややこしいですね。
入出力、レベル、インピーダンス、バランスアンバランスですが、ざっくりと解説してみようと思います。ネットの情報を見てみても分かりにくいし、間違って解説されているものも散見されます。
まず、入出力ですが、出力の最初は、マイクからの出力です。そして、最後がスピーカーの入力になりますね。
マイクとスピーカーは基本的にコイルと磁石だけのほぼ同じ構造をしてるんです。
コイルと磁石で、マイクは音を電気信号に変える、逆に、スピーカーは、電気信号を音の振動に変えるのですが、逆に繋ぐとマイク(ダイナミック型)から音が出ますし、スピーカーをマイク代わりにすることもできなくはありません。
スピーカー同士を直接繋いで片側のコーン紙を指でコンコンと軽く叩くと、他方から、かすかに音が聞こえます。
原理的にはスピーカー2個で電源なしのいわば電話ができるのですが、実用的ではないので、マイクとスピーカーの間に増幅器(アンプ)を入れます。
マイクレベルはというと、だいたい1mV(0.001V)のレベルで、スピーカーは、家庭用の一般的なもので、1Vから10V位なので、アンプは、マイクの信号を千倍から一万倍に増幅しています。
ここで大切なのがアンプは電圧を増幅しただけではダメで、スピーカーを駆動するだけのパワーがないとちゃんと鳴ってくれないということなんです。
電圧は水圧と同じで高さだけの意味なので、水流を流せる水量、電気信号では電流が確保できないとスピーカーは動きません。スピーカーのコイルに電流が流れてはじめて、コーン紙が動くからです。水圧がいくら高くても、水が1滴しかなければ役に立ちませんよね。
ところで、車の直流12Vバッテリーから交流100Vに変換するノートパソコンやスマホ用途のインバーターという装置があるのをご存じでしょうか。この装置では、家庭用の1000Wのヘアドライヤーは使えません。同じ100vの電圧でも十分な電流が流せないからです。
同じように、440Hzの音叉の1mVのマイク信号を千倍の1Vに増幅して、スピーカに繋いだとしても、十分な電流が流れなければスピーカーは鳴りません。
ドライヤーの場合、100V、1000Wだとすると10Aの電流が流れていて、ドライヤーの抵抗値は10Ωですね。
440Hzの音叉の1Vの信号の場合、一般的な8Ωのスピーカーに繋いだなら、0.125Aの電流、電力は1V×0.125A=0.125wになっていて、この電流が確保できるアンプでなければ、正規に鳴っていないことになります。
電圧と電流と抵抗が出てきました。オームの法則です。そして、電流×電圧が電力(w)です。
でも、ここで、音声信号を一番ややこしくしているのが抵抗なんです。これが周波数で変わるということと、マイク出力、アンプ入力、アンプ出力、スピーカー入力それぞれで抵抗を持っているということなんです。交流の抵抗のことをインピーダンスといいますが、音声信号も交流なのでこれに従います。
抵抗は直流の場合は単純ですが、交流だとこの直流の抵抗の他に、コイルが抵抗として働き、静電容量の分はマイナスの抵抗となって、これらが周波数で変化するのでややこしいんですね。
音声信号は、50Hzくらいの低周波から20000Hz位までの幅の広い周波数を扱うので、この交流での抵抗=インピーダンスをざっくりと公称値として扱うことが多いです。
一般的に音楽用のマイクのインピーダンスは100~600Ω、スピーカーは4~16Ωです。これらマイクとスピーカーを直接繋ぐとどうなるでしょうか。マイクの出力電圧はすごく小さいのでほとんど音はでませんが、微かにコーン紙は振動します。
マイクのインピーダンスが高くて、スピーカーのインピーダンスが低いですから、マイクの出力はほとんどスピーカーに消費されます。しかし、インピーダンスは周波数で変わる、つまり、音の高さで抵抗値がかわっているのに、そのほとんどがスピーカーで消費されるのですから、このインピーダンスの変化に伴って、本来の音の周波数特性が大きく変わってしまっています。
マイクもスピーカもインピーダンスが周波数で変わるのですが、マイクは、公称100~600Ωで正規の音を出力しているのに、スピーカーは、公称4~16Ωですから、電流がスピーカーで流れすぎて、電圧を維持できない、つまり、信号の正確さを保てなくなるということです。
ここで簡単な小学校の理科の時間でやったような直流での話にします。
1.5Vの乾電池を2個直列にして 3V。これに 10Ω の豆電球を繋げば、0.3Aの電流で点灯します。電力は 3V×0.3A=0.9w 簡単ですね。
乾電池の出力インピーダンスは、0.5Ω位なので、2個直列で 1Ω くらいです。
さて、豆電球を並列に2個にするとどうでしょう。
電圧は 3v で、抵抗が5Ωになって、0.6Aで、1個の時と同じ明るさですね。
次に豆電球を並列で20個にするとどうでしょう。抵抗が 0.5Ω になりますね。
乾電池の出力インピーダンスは 0.5Ω くらいなので、2個直列で 1Ω になります。
豆電球20個では、負荷抵抗 0.5Ω ですから逆転してしまい電圧降下が起きてとてもまともに点灯しません。電流は6Aも流れる計算ですが、電池の出力インピーダンスが加算されるので、2A程度になると思います。
マイクとスピーカも同じようなことが交流の周波数域で起こるということです。
インピーダンスの高いマイクをインピーダンスの低いスピーカに直接接続すると、極僅かなコーン紙の振動とはいえこの振動は、本来の音を再現していません。周波数が高いほどインピーダンスは高いく変化するので高音が落ちた音になっているはずです。
これがいわゆる「ロー出しハイ受け」の理由の一つです。
続きは また次回に・・
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